岐阜県下呂市の多尊仏

 

1.善光寺堂 下呂市夏焼 

 

 県道62号線下呂白川線の鳥ケ屋口バス停の北旧道の三差路にお堂がある。お堂前の道路沿いに石仏が並んでいる。十三仏は左端にある自然石で彫り窪めて最上段に虚空蔵菩薩を、その下四段に三体づつで十二体彫られ摩耗が進んでおり尊名の特定が難しい。すべて坐像で左右端の縁側部に「安永七戌年十□月」(1778)の紀年銘がある。十三仏は『地蔵十王経』に十王の本地仏である十仏を基本に三仏を加えて成立した。初七日の不動明王から三十三回忌の虚空蔵までの十三仏が彫られているが、全国ではそれほど多くはない石仏である。なぜ岐阜に多いのかはっきりしない。なおここには六地蔵と庚申塔、三界萬霊塔、二十三夜の石塔などもある。

 


 

2.田口路傍 下呂市田口 

 

 善光寺堂から県道62号線を南下、田口の交差点を右折すると、すぐ右の石垣が切れた所に石仏群がある。中央の丸彫坐像はお地蔵様のようだが法界定印をしており、頭を挿げ替えたようだ。その左右に六地蔵。そして左端の三界萬霊等、右端に十三仏がある。十三仏は笠付で平板のような石材を舟型にくり抜き十三仏を浮彫している。5段に彫られるが最上部は虚空蔵菩薩の一体のみで、あとの4段に12体で右下端に不動明王となっている。すべて立像で保存状態も良く綺麗である。慶應四戊辰年卯月吉日(1868)銘、

 

 

 


 

3.如日堂 下呂市蛇之尾 

 

 田口の十三仏から、元の田口交差点まで戻り右折、436号線に入るとすぐ左にある。道路沿いにたくさんの石仏・石塔が並んでいる。十三仏は右端にあり舟型で外縁部を残してくり抜き浮彫してある。白いカビのようなものが覆っており状態があまり良くない。最上部の虚空蔵菩薩は坐像だが他はすべて蓮華座に立つ像でスリムな容姿である。虚空蔵菩薩の左右に「文化八未年十一月吉日」(1811)の銘が陰刻してある。お堂の周辺には青面金剛庚申塔、十一面観音、千手十一面観音などがあるがどれも白いカビに覆われている。

 


 

 如日堂の向かいに平成11年に改修された弘法大師堂があり、中に弘法大師と石塔が一基ある。山伏型角柱の石塔は正面上部に天狗、不動明王、弘法大師を浮彫し「奉納三山西國四國秩父坂東塔 光明真言百万遍 念佛百万遍」とあり注目した。右面に「光明真言百万遍 文化八年辛未十一月吉日」(1811)銘で十三仏と全く同じ建立時期である。左面に「願主蛇野村田口伊助」とあり、どちらも田口伊助の建立とみて良いであろう。なおこのお堂は大正時代と平成に改修されたが、すべて田口家の子孫が行ったとある。

 


 

4.蛇之尾路傍 下呂市蛇之尾 

 

 如日堂を東へ県道436号線を約1キロ行き、左の旧道へ入るとすぐ左に石仏群がある。山を背にしてたくさんの石仏が階段状に並んでいる。近くでお世話をしている方が見え、最近は猿が悪さをして石仏をゆらし倒してしまい困っているとのことでした。三石で百観音は圧倒的な迫力であり、他にも岩屋内に安置されている馬頭観音や三尊が刻像された三山塔など見応えがある石仏群である。

 


 

 百観音は左が西国三十三観音で天保十三年(1842)、中央が坂東三十三観音で弘化三年(1846)、右端が秩父三十四観音で弘化四年(1847)と三基とも5年の間に造られている。どれも立像と坐像が混在しており、彫も同じように見受けられるので同じ石工の作品であろうか。西国のみ脇に番号が記されているが他は記載がない。三基揃っているのは珍しく貴重である。

 


 

5.阿弥陀寺 下呂市御厩野1200 

 

 436号線に戻り東へ行くと国道257線に突き当たる左へ行き舞台峠を登り切り御厩野バス停から412号に入り北上すると阿弥陀寺がある。山門前は整理が行き届き白い小石を敷き詰めた中に綺麗に石仏が並んでいる。自然石を彫り窪めすべて坐像で配置されている。曲げた脚を覆う衣が重なって面白い。表情や持物もはっきりとわかる。享和二壬戌天中秋吉日(1802)銘。青面金剛庚申塔や萬霊塔がある。

 


 

6.二渡観音堂 中津川市加子母二渡 

 

 国道257号線に戻り南下、舞台峠を過ぎて約3キロ佐見口バス停左側の坂を少し登ると観音堂がある。坂の途中に観音が数基並びその先、お堂の手前に十三仏碑が迎えてくれる。自然石を彫り窪めて刻像されている。すべて坐像で顔が大きくなっており白いカビがついているのが残念である。明和八年(1771)の建立。

 


 

 本堂の右に一石三十三観音と廿三夜塔が並ぶ。どちらも自然石を彫り窪め少し密集した状態で刻像されている。ここもすべて坐像、どれも丸顔で優しそうだ横に番号が記されている。安永八己亥年九月吉祥日(1779)の紀年銘がある。また観音堂の鍵を開けて拝観させて頂き、土地の信仰心が歴史に重なって残る仏像など拝観した。