東京都大田区多摩川沿いの石仏

 

1.花光院 大田区矢口2-3-12 

 

 東急多摩川線の「武蔵新田駅」の南500mのところにある真言宗智山派の寺院。玉川八十八ケ所霊場の62番札所。本堂に向かって左側、樹木に囲まれるように大きな宝篋印塔が安置されている。塔身は月輪に四方仏の梵字が刻まれ、基礎に銘文がある。反花座は四面に十六羅漢が浮彫されている。「善光寺参拾参度参詣成就」寛政六年甲寅四月(1794)の銘がある。他には墓地への途中、本堂横の覆屋に文化十四年建立の六地蔵、地蔵立像の大乗妙典供養塔と不動明王が並ぶ。また萬霊塔の頂部には合掌の如来(延宝二年1674)などが拝観できた。

 


 

2.延命寺 大田区矢口2-26-17 

 

 花光院の南、信号を過ぎるとすぐ左にある浄土宗のお寺。山門前に「火雷除子安地蔵尊」と書かれた石塔がある。これは延文年間に雷火により堂宇を焼失、永禄年間に火難除けに延命地蔵尊を奉安し堂宇を建立した印である。境内に入ると左に3mもあろうか大きな六地蔵石幢が目に飛び込む。龕部の六地蔵は立像で舟型に彫り窪めて浮彫されている。幢身も立派で蓮の葉模様が六面に描かれており、基礎なども重厚である。弘化三年(1846)の建立。他には萬霊塔の前にある角柱の地蔵立像は、少し横を向く姿で趣が感じられる。

 


 

3.円応寺 大田区矢口3-21-15 

 

 延命寺をさらに南へ500m行き多摩川へ突き当たる手前にあり真言宗智山派で本尊は大日如来。旧鎌倉街道沿いにあり古くから多摩川の渡し船があり市場が立ち、多摩川と岸辺に住む人々を見守っていた。境内には古市場村の人々が建立した庚申塔がある。この青面金剛は区内最古で区指定文化財である。青面金剛は六臂だが合掌型、剣人型のどちらでもなく、また手首に蛇を巻きつけた異形である。紀年銘は寛文十一年壬子(1672)。新しく建てられた十三仏などもある。

 


 

4.大楽寺 大田区新蒲田3-4-12 

 

 円応寺から東へ1km道塚小学校の西にあり蒲田不動尊とも呼ばれている。寛仁二年(1019)開基と伝えられる古刹。徳川二代将軍秀忠が三代将軍家光のために経文一巻と朱印を奉納。葵の紋の使用が認められたと寺ホームページにある。境内の萬霊塔は新しく組み立てられたようでコンクリートのピラミッド型に墓碑が嵌め込まれている。本堂裏の墓地に向って六地蔵、鳥獣虫魚樹木草一切之霊塔、六地蔵石幢、青面金剛庚申塔などがある。気になったのは丸彫の阿弥陀如来立像で蓮の葉が浮き彫りされた台座に「造立石佛一体庚申供養」とあり寛文九己酉年二月(1669)銘で庚申塔でもあるようだ。

 


 

5.遍照院 大田区多摩川1-5-14 

 

 大楽寺を北西へ1km東急多摩川線「矢口の渡し駅」の北にある。本堂の横に石仏が七基一列に並べられている。右の舟型は円頭光背の阿弥陀立像で「奉庚申供養二世安楽」延宝八年庚申十月(1680)の銘文で台石に三猿がある。中央の板碑は上部に線彫で阿弥陀立像が彫られた念佛講供養塔で承応三年(1654)銘。左の駒型は合掌六臂の青面金剛で一邪鬼、二鶏、三猿、建立時期は右の阿弥陀庚申と同じ延宝八年の庚申年である。他に庚申塔がもう一基と廻國塔などがある。

 


 

6.密蔵院 大田区森北3-5-4 

 

 「矢口の渡し駅」から東急多摩川線に乗車し「沼部駅」下車。駅の東に密蔵院がある。正面に本堂があり向かって右に金剛尊院がある。その手前に石仏が点在し、すべて庚申塔である。この金剛尊院はもと庚申堂で本尊は木彫寄木作り彩色玉眼の青面金剛で「沼部の庚申さま」として知られていた。元禄七年(1694)に浅草の大仏師浄心作である。写真の舟型石仏は上部に日月、下に合掌の一猿、銘文があるが拓本でなければ判読できない。延宝二年(1674)の建立。

 

 

 


 

 一猿庚申塔の近く、舟型にくっきりと深浮彫された聖観音立像がひと際目立つ。右手は与願印、左手は未開敷蓮華を持ち、かすかに「庚申待」の銘文が読める。細い切れ長の目を閉じ、安定感のある下半身である。寛文三癸卯年十二月二十六日(1663)と江戸初期の種々の主尊の庚申塔時代を示す庚申塔である。