兵庫県加西市の石仏

1.羅漢寺 加西市北条町北条

 羅漢寺は全国的に有名だが、加西市では石棺仏も見落とせない。加西市史別巻「加西の石仏」、市発行の「加西市観光ガイドブック」「加西市播磨国風土記の里と石仏と」を参考に廻るとよい。さて羅漢寺のパンフに“茫洋とした過去の歴史のなかに深い謎を秘めてきた北条石仏群。この石仏を訪ねる誰もが「いつ頃、誰が、何のために」造ったかを知ろうとします。しかし、これに答えうる史実も資料も、たしかな言い伝えも何ひとつとして存在していないのです。”とある。さてこれらの羅漢は392体あり、頭部以下の彫りは簡略で、両手は陰刻線のみで小さく表す像が多い。面部の彫りも素朴で顔および眉と眼の間を狭くして、切れ長の目を一本線で表す。鼻と口も小さく独特な表現方法である。

 


羅漢寺の釈迦三尊と周辺の石仏

 釈迦三尊を中心にその左右に大日如来と阿弥陀如来、釈迦三尊の手前左右に閻魔と倶生神が並びどれも市指定文化財である。これらは羅漢と異なり光背を持ち深浮彫されている。女性供養者坐像には慶長十七年壬子□月十八日(1611)の紀年銘がり、入口の仁王にはその前年の銘がある。また来迎二十五菩薩がありこれは明和二年(1765)の造立で在銘がはっきりしている滋賀県大津市西教寺に次いで古い二十五菩薩である。羅漢以外にも数多くの重要な石仏が拝観できる。

 

 

 


3.小谷地蔵堂 加西市北条町小谷285

 

 周囲に縁取りのある家形石棺の蓋石の内側に彫られている。阿弥陀坐像は定印で、両脇の六体の地蔵は半肉彫りしてあるが摩滅や欠失が見られ悔やまれる。「康永四暦乙酉八月」(1345)と南北朝の年号。「一結衆之人造」とある。伝承があり「よはりこき地蔵」と呼ばれ子供の夜尿症やよだれたらしの平癒祈願の参詣者多かったという。像の横下にある小型石棺で作られた阿弥陀坐像はこれも南北朝から室町期と推定されている。

 


 

3.延寿寺 加西市中富町 

 

 本堂の裏に石仏が数基ある。左端は石棺仏であるが中央で切断があり接がれている。中央に阿弥陀坐像、両脇に六地蔵立像、そして下部に二人の僧侶が彫られている。両側の縁部に文字が見られるが年号は判読できない。

 

その横は深く彫り窪めたなかに地蔵が浮彫され笠石が乗せてある。そして舟型で摩滅が進行し像容がはっきりしないが、体をやや斜めにした如意輪観音と一字一石塔がある。

 

 

 


 

4.大日寺 加西市野上町 

 

 ここには市指定の背面十字架地蔵がある。両手先を亡失し首は折れて接合されているが像の背面に十字架状の陽刻があり左右とも上端が尖っている。石材は地元の凝灰岩でキリシタン信仰に関わるものと考えるむきもある。同様のものが加西市内に14基あり、これらの年代は享保から寛保である。他に家形石棺の蓋石に刻まれた薬師如来坐像は光背に像を取り巻くように七体の化仏を浮彫してある鎌倉から南北朝の石棺仏がある。

 


 

5.安養寺 加西市豊倉町 

 

 曹洞宗の寺院である。境内には江戸期以前の石仏などが多いが、雑然としており写真を撮るのに周辺の草を掻き分ける必要があった。写真の三尊仏は小祠内にあり南北朝と推定。正方形に整形された豊倉石の板石に中心は如来座坐像で摩滅が激しく面貌は不明瞭だが右に不動明王、左に毘沙門天を半肉彫りする。他にも鎌倉期の阿弥陀坐像と、もう一基頭上にキリークを陰刻したした阿弥陀は膝上に慶長二年(1597)と刻まれ、五百羅漢石仏と制作年代が近く作風に共通点があると言われている。

 

 

 


 

6.山伏峠の石仏群 加西市玉野町西谷1127-3 

 アラジンスタジアムの東側の農道に駐車して、南に坂を上ると右にある。手前は石棺仏の阿弥陀坐像である。周囲が額縁状のため安定感があるが摩滅が進んでいる。建武四年(1337)の銘が確認されており県指定文化財。奥の地蔵は高さ180センチで、これも県指定文化財。左右に縄掛突起がある長持形石棺蓋石を使用し中央に宝珠持ち半跏地蔵、周囲に六地蔵立像が配置されている。暦応元年十一月廿四日(1338)の年号がある。もう一基は阿弥陀、地蔵、僧形の三尊仏で推定南北朝と考えられている。

 


 

7.常行院 加西市山下西町 

 

 墓地の奥にコンクリート製のお堂があり役行者と前鬼。後鬼がある。かなりデフォルメされており尊名は独断である。写真を掲載するのご検討ください。ほかにもうひとつあるお堂には蔵王権現、不動明王、薬師如来があり、蔵王権現は珍しい。メインは石造七層塔で、住職の庭にあるが塀越しに拝観ができる。基礎から宝珠まで当時のものが残り姿形の美しい塔である。室町時代になると層塔造立が激減するなか数少ない例で重要である。

 

 

 


 

8.古法華寺 加西市西長町 

 

 駐車場からお寺への途中に近年の製作と思われる羅漢、薬師如来、釈迦涅槃像などが迎えてくれる。多種類の石仏が林立しており善光寺三尊や大型の役行者、不動明王などもある。その中でここではちょっと珍しいので「弘法大師産湯像」の写真を掲載する。本命は収蔵庫にあり事前連絡で拝観可能な国重文の「石造如来と脇侍像」である。連絡をしなかったので拝観ができなかったがわが国で最古級の石仏なので是非拝観したいものである。